vol.12 金物工法による設計について その3

今回は金物工法を利用した小屋のおさまりを紹介します。

❶登り梁にプレセッターSUを取り付ける場合

登り梁にプレセッターSUを取り付けた試験結果を見ると、水上側と水下側の梁受け金物2個での耐力を示しています。

通常梁受けのせん断試験は梁の両端に金物を取り付け加力し、梁にかけた荷重の1/2を金物1個当たりのせん断耐力として評価します。力学的には登り梁の場合も1/2負担で良さそうですが、繊維方向の影響や実験時の載荷方法や固定方法を考慮し金物2個での表記となっているようです。

そのため金物1個当たりの耐力は設計者判断に委ねられています。

参考までに勾配に応じた社内試験と比較してみると、下表になります。

5寸勾配までは5%程度の耐力低下であり特に配慮はいらないと考えられます。10寸勾配では引張耐力は10%低下しているので、複合応力を受ける箇所では少し安全率等を考慮しても良さそうです。

たとえばトラスの一部で登り梁を使う場合では、下弦材で外周部の引張力が処理できている計画であれば、特段耐力低減などの配慮は必要なく、梁受け金物のせん断耐力を使用して良さそうです。

プレセッターSUの勾配ごとの納まりは「MP接合部標準図」に記載ありますので併せてご利用ください。

登り梁試験のイメージ図

PS-18SU 標準的な仕様(柱-梁接合)での耐力比較

勾配
(寸)
梁成
(mm)
短期基準耐力(kN)0寸に対する耐力低減率
引張せん断引張せん断
018014.548.4
518019.546.51.340.96
1021012.747.00.880.97
※ 0寸は第3者試験結果による。PS座付ボルト・中ボルトで若干耐力値が異なるため、BXカネシンHP
掲載の数値より高めになっています。詳細はプレセッターSUマニュアルをご確認ください。
※ 5,10寸はBXカネシン社内試験結果による。
※      BXカネシン社内試験成績書が必要な場合、構造金物相談所までお問い合わせください。

❷金物工法で方形屋根を構成する場合

多雪地域等で水平構面の耐力が厳しい場合、構造用合板を梁に直にとめ付けるため、登り梁天端と桁梁の高さがそろいます。その場合、金物工法の通常の収まりでは水平斜めの登り梁接合は対応していないので、納まりに工夫が必要です。できれば既製品での設計を推奨しますが製作金物の依頼が多いため、「MP接合部標準図」に参考納まりを掲載しました。小屋納まり検討時にご活用ください。

❸束を介して梁を接合する場合

束に引張力が生じて、ロールパイプ10では耐力が不足することがあります。

束長さが390mm以下であれば、PZホールダウンパイプ(PZ-HDP-30)を配置できますが、一部のピンが打てません。

標準的な使い方から外れるため設計者判断となりますが、仮に実際に打ち込めるドリフトピン本数が同じ、PZ-HDP-15と引張耐力が同等程度と考えると設計可能と思われます。 登り梁側も繊維直交方向より繊維方向に傾いたほうが耐力向上すると考えられるので、通常の試験結果を参照しても問題ないと考えられます。その際のドリフトピンの縁端距離は耐力を参照したPZ-HDP-15の設定以上となるようご注意ください。

❹終わりに

今回は金物工法と小屋まわりの納まりについてご紹介しました。

もし納まりを検討する際、『このような場合、どのように考えた良いか、納めたらよいか?』等ありましたら、構造金物相談所までお気軽にお問い合わせください。一緒に検討いたします

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