連続梁の一部にピン接合(ヒンジ)を設けるゲルバー梁を採用することで、普通なら特注材となる架構を一般流通材で設計することが可能になるかもしれません。今回は、長期荷重がかかるゲルバー梁と単純梁について解析・検討を行い、断面の差異を比較します。
目次
- はじめに
- 検討諸元
- 計算結果
- おわりに
1. はじめに
MP木造建築において、6m超の架構を設計する機会はありませんか?
そのような場合、ゲルバー梁を活用すると梁成を抑えつつ、一般流通材で設計することができます。
以下に単純梁とゲルバー梁の曲げモーメント図の比較を示します。図のようにゲルバー梁とすることで単純梁と比較して曲げモーメントとたわみを抑えることができます。

スパン6m超の場合だけではなく、以下のような場合でも活用できます。
①単純梁では梁成が大きくて天井に納まらない等、意匠上問題がある場合
②壁面方向6m超の長い吹き抜けを作りたい場合(耐風梁として弱軸方向にゲルバー梁を使用)
③強度等級の高くない地域材(製材などの4m材)でスパンを飛ばしたい場合
今回はゲルバー梁の設計例をご紹介します。
2. 設計諸元
下図の床梁の長期荷重に対して検討します。単純梁とゲルバー梁の梁成を比較します。

1)フレーム解析ソフトは「フリーストラクチャー7.1(ストラクチャー社)」を使用します。
(※一貫計算プログラムでは一般的に単純梁モデルしか入力できません。よって、ゲルバー梁の検討にあたっては、理論式に基づいて計算式を整理した上でエクセル計算、あるいは、トラス構造と同様にフレーム解析が必要です。)
2.荷重条件は、以下としました。荷重負担幅は1.82mとします。
・固定荷重:1000N/㎡(梁の自重含む)
・積載荷重:事務所用途として、架構用:1800N/㎡、地震力(たわみ)用:800N/㎡
まとめると、
応力検討用 : TL=B(DL+LL) =1.82m×(1000+1800)N/㎡ =5,096N/m → 5,100N/m
たわみ検討用: TLe=B(DL+LLe)= 1.82m×(1000+800)N/㎡ =3,276N/m → 3,280N/m
3.部材はオウシュウアカマツE105-F300とします。
ヤング係数はE=10,500N/㎟、ポアソン比はE/G=15相当の6.5とし、梁についてはせん断変形を考慮して解析します。
断面2次モーメントの低減係数は0.9、断面係数の低減係数は0.8、部材のせいの増加に伴う低減係数は適宜としました。
4.梁端部の接合部は梁成に応じたプレセッターSUとします。継手に関しては、MP継手プレートtype-DPによる納まりとします。

5.継手の位置は、継手なしの連続梁で計算した結果から、曲げモーメントが0になる位置を確認し、その近傍に継手を設けて再度解析を行いました。
ここでは支点から1.35mを継手位置としました。これにより、接合部の実質的な回転剛性が影響しない計画としました。
3. 計算結果
以下に梁成の比較、曲げモーメント・せん断・たわみの比較を示します。図のようにゲルバー梁とすることで、単純梁と比較して梁成をかなり抑えられることが確認できました。


曲げモーメントの断面検定:M/Ze<Lfb(=1.1/3×30=11)
ゲルバー梁:25.0 ×106 N・mm /{0.96×0.8×(105×4202/6) } ㎣= 10.5N/㎟ < 11.00 N/㎟ ・・・OK
単純梁:33.9×106 N・mm/{0.93×0.8×(105×5102/6) } ㎣ = 10.1N/㎟ < 11.00 N/㎟ ・・・OK

接合部のせん断耐力の検定:接合部耐力>設計用せん断力(長期許容せん断耐力はここではα=1.0)
ゲルバー梁端部:PS-39SU(せん断):45.6/2×1.1= 25.0kN>15.1kN ・・・OK
ゲルバー梁継手部:2-TPDP-56(せん断):43.6/2×1.1=23.9kN>22.0kN ・・・OK
単純梁:PS-39SU(せん断):45.6/2×1.1= 25.0kN>18.6kN ・・・OK

たわみの検定:δ/L < 1/600
ゲルバー梁:11.9mm / 7280 mm = 1/611 < 1/600 ・・・OK
単純梁:11.6mm / 7280 mm = 1/627 < 1/600 ・・・OK
4. おわりに
以上より、ゲルバー梁の活用で一般流通材でも梁成を抑えた設計が可能であることを確認しました。
MP継手プレートtype-DPのせん断試験結果は社内試験データがありますので、必要な場合には構造金物相談所までご連絡ください。

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