【もくコミュ】No.06 非住宅への挑戦 ~プレカット工場と描く「トラス」の設計図~

木造建築を実現させるには、もはやプレカット加工技術なしではできません。

“組みあがるものを作る”という重要な部分を担うプレカット工場の日常を、普段は住宅を中心に施工している工務店の社長さんとの対話から伺ってみましょう。

登場人物

匠(たくみ)氏:匠工務店の社長。
住宅メインから非住宅への進出を模索中。

加山(かやま)氏:木材プレカット会社の営業担当。
特殊加工や構造金物の知識が豊富。

互いの役割と木造設計に対する関わり方は異なりますが、より良い木造建築を目指す界隈のメンバーです。

プレカット会社に木造トラスのご相談

加山さん、例の福祉施設の案件だけどさ。意匠設計の担当が、10mスパンの空間を作りたいって言いだして、今、構造設計者とトラスを組む方向で協議していてね 。
うちとしてはトラスなんて初めてだし、正直、住宅と同じプレカットの感覚で受けていいのか不安でね 。

10mですか、それは気合が入りますね!
2階建ての福祉施設ですね。食堂やプレイルームなどで広いスペースが必要になるケースですかね。

そうなんです。今回は2階に食堂があり、10Mの柱なし空間が欲しいという要望でね。
意匠担当が構造屋さんと相談しながら設計中なんだよ。
設計も大事だけど、材の加工やコストなんかも見ていかないと、事業主にも良い提案ができないよとアドバイスしている最中なんだよ。
それで、まずは加山さんに相談してみようと思い出してね。

ありがとうございます。
確かに絵に描くだけのトラス計画もたまにありますから、現実的な提案は大事ですよね。
まずは材の加工についてですが、住宅用と同じラインでいけるかというと、少し工夫が必要になるケースもあります。
ただ、仕様書が公開されているJISトラスのようなキングポストトラスについては、斜め角度の加工や、複雑な彫り、スリット加工については、うちにある標準的な加工機でも対応できます。

なるほど。
まだ、キングポストトラスになるかどうか分からないんだけど、JISトラスじゃないと難しいのかい。

最近は、かなり複雑な納まりでも「フンデガー(高性能加工機)」などの設備で十分対応可能ですので、前もって詳細が分かりましたらお知らせください 。

機械でいけるのか。
手刻みじゃなきゃ無理かと思ってたよ。
でも、トラスの接合部って特殊な金物を使うだろ? 市販の金物メーカーのもので足りるのか、それとも特注品になるのかな。

メーカー既製品でいける部分も多いですが、応力が集中する箇所には「製作金物(オーダー品)」を選ぶ構造設計者も多いですね。必要であれば金物製作を行うメーカーさんも紹介できます。
メーカーが、様々な既製品で組めるトラスの設計事例をホームページで紹介していますので、実例写真等見ながら雰囲気も確認できますよ。


トラスは施工計画が大事

加工ができるのは分かった。
でも、現場が怖いんだ。
構造屋が計算で出してくる「たわみ」の数値と、実際に現場で組み上げたときの「精度のたわみ」って、どうしても差が出るだろ? 大きな天井のたわみはボードで勾配出ちゃうし、床は振動もあるしね。

鋭いですね。非住宅、特に大スパンはそこが肝です 。接合部のわずかな「ガタ」が、継手箇所が多いと大きな誤差になりますからね。
うちは加工精度を高めますが、現場でのドリフトピン(DP)の施工確認や、建方の垂直管理といった「施工精度」との掛け算になります。

現場での「地組(じぐみ)」も課題だな 。トラスを地上で組んでからレッカーで吊り上げるのか、空中で組むのか。

トラスの形状や組み方は様々ですが、接合方法によって施工計画も変わります 。地組の方が精度は出しやすいですが、置き場や吊り上げ荷重の検討も必要です。そのあたりも、積算のタイミングで一緒に協議しましょう。


フロントローディング(FL)のすすめ

あと、図面を見たら2階床梁の一部に「梁成450mm」を超える集成材があるんだ 。これって、いつものプレカット用集成材とは違うものなのか?

 はい、それは「流通品」の枠を超えた特注材ですね 。実は集成材工場というのは、ラミナと呼ばれるひき板を何層も貼り合わせて一本の梁を作っています 。その工場の設備によって、作れる樹種や強度等級、最大寸法が決まってきます。
 
弊社の取引先集成材工場でも600㎜くらいなら作ってもらっています、少し割高になりますが、数本程度ならトラスなどを考えるよりも通直材を選ばれる方が多いですね。
樹種や等級など作成できる材料については、日本集成材工業協同組合のサイトで確かめることもできますよ。あとでメールでお伝えしますね。

どこでも作れるわけじゃないのか。

金物や羽柄材(間柱や垂木)、面材なんかの準備はどうなる? 住宅のときは「プレカット一式」で届くけど、この規模だと運賃だけでも馬鹿にならないだろ。

おっしゃる通りです。
非住宅は部材が大きく、量も多いため、搬入計画がコストを左右します 。
今回の建設地は、弊社の運搬費用も通常の範囲ですね。
プレカット材は建設地に応じた適正範囲があります。お付き合いは大切にしていますが、場所によっては正直に割高になるお見積もりを説明することもありますね。

金物だけ別便で届いて「現場で足りない!」ってなるのが一番困るんだ。

そこは抜かりなく。部材の搬入タイミングに合わせて、必要な金物もセットで納品するように工程を組みます 。
詳細は、図面が確定して積算を出す段階でもう一度、膝を突き合わせて詰めましょう 。
匠さんのように計画の段階でご相談してくださると、プレカットの業者としてもいろいろ情報を提供できます。
設計が終わったあとで、施工に合わせて納まりや仕様を変えるなどすると手間が増えますよね。
初期段階から施工の要望や合理化を合わせて検討する、フロントローディング(FL)なんていう言い方も最近しています。

FLね。自社で設計を行う工務店は毎回がFLかもしれないね。加山さんが加わってもらえると心強いよ。初めてのトラスだけど、これなら理事長に「うちに任せてください」と言える気がしてきた。

ありがとうございます。いい木造建築を、一緒に作り上げましょう!


まとめ

・トラスなどの複合梁は接合部が要です。既製品を上手に使うことがポイント。

・プレカット業者との施工を見据えた、設計や企画段階の検討・フロントローディングは計画をスムーズにする。

・大きな断面となる集成材は製作を見据えたプレカット工場の選択も必要


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