MPねじ接合システムを用いてトラスの構造解析を行う流れを解説します。
倉庫のような平屋に屋根架構をかけた場合について、設計マニュアルの流れに沿って検討します。
任意形状立体フレームの弾性応力解析が可能なFAP-3(株式会社 構造システム)にて解析モデルを作成します。
設計例題case1と似た条件について、FAP-3にて検討いたしました。
尚、後半(5.断面検定)以降の前回と被る内容は省略しています。
参考資料:
- 講習会テキスト 木造軸組工法 中大規模木造建築物の構造設計の手引き(許容応力度設計編) 公益財団法人 日本住宅・木材技術センターp.313 山形トラスの設計例
- MPねじ接合システムマニュアル
目次
- 講習会の受講
- 諸条件の整理
- 構造計画の確認
- 解析モデルの作成
- おわりに
1. 講習会の受講
設計マニュアルの適用範囲に記載の通り、BXカネシンが認めた設計者のみ使用できます。
講習会の受講に関してはBXカネシンMP課までご相談ください。
ご要望に応じて個別に講習を行うことも可能です。
講習会では設計ツールとして接合部設計ツール・設計チェックリストを配布しております(他、ユーザーサイトではMPねじ接合システムマニュアル、架構詳細図例、構造標準図がダウンロードできます)。下記の検討にお使い頂けます。
2. 諸条件の整理
キングポストトラスを例に検討します。検討条件は下記とします。
1. 屋根勾配及びスパン | 4寸勾配、スパン10m |
2. 屋根トラスの配置間隔 | 3.0P(2.73m) |
3. 部材断面寸法及び使用材料、 基準弾性係数 | 主材及び登梁 : 105×240(E=9500N/m㎡、G=750 N/m㎡) 束 : 105×105(E=9500N/m㎡、G=750N/m㎡) 側材 : 2-38×235(E=9600N/m㎡、G=640N/m㎡) (オウシュウアカマツ仕様とします) |
4. 設計用荷重の設定
・固定荷重は折板屋根相当と仮定しました。
・部材重量は一律比重を5.0kN/㎥とし、解析モデル内で自動計算します。
・積載荷重は鉄骨体育館屋根の積載荷重を採用しました。
・積雪荷重は垂直積雪量50cmの一般地域を想定しました。
・積雪荷重の特定緩勾配による割増には当てはまらないため考慮しません。
・風荷重は安全側にシャッター全開の場合を想定し、風上開放型で計算しました。
・安全側の配慮として、短期の風荷重時の検定においては積載荷重を除きました。
・簡易検討として、振れ止めや12mごとの石こうボードによる荷重は無視したため、固定荷重には予備荷重として0.1kN/㎡を加えました。
固定荷重(DL) : 0.2(予備荷重として+0.1) (kN/㎡)
積雪荷重(SL) : 1.0 (kN/㎡)
積載荷重(LL) : 0.3 (kN/㎡)
風荷重 (WY) : 1.0、-0.5 (kN/㎡)
3. 構造計画の確認
スパン表を参考に今回の計画が妥当であるかの確認を行います。
スパン表は参考文献2をご確認ください。
解析にて材端部条件をピンとして簡易に応力チェックを行う方法でも構いません。
今回はスパン表を参考にMPねじ接合システムのNJ-14を用いることとします。
4. 解析モデルの作成
4.0)解析モデル図の作図
ある程度納まりを想定して解析モデル図を作図します。今回は、MPねじ接合システムの架構詳細図例を参考にしております。
想定する解析モデルが不安定にならないかを確認する意味でも必要な作業です。
住宅のプレカットラインで加工可能なこと、また、経済設計に配慮して一般流通材(集成材であれば120×450×6m以下、製材であれば、120×240×4m以下)の断面・長さの部材を用いるように計画します。
4.1)CADによる解析モデルの作図とDXF変換
今回は側材を別々に入力するため、ファイル>新規作成>立体フレームより、ファイルを作成します。
JWCADを用いてモデル図(dxf)を作成し、解析プログラムに読み込みます。
JWCADによる作図>DXF変換>ファイル>CADデータファイルから読み込み
CADで作図する際には、線分は解析モデルで作成する節点ごとに配置します。
また、解析プログラム内部で部材の接合条件を設定しやすいよう、全体座標系に合わせて左から右、かつ、下から上に作図する等、一定のルールをもって作成して下さい。
また、変換の際には単位系にご注意ください。
2次元CADからDXFに変換して入力する場合、XY座標系に入力されるため、解析モデル内の節点の表にて、Y座標の入力値をZ座標に変更する必要があります。
4.2)部材断面・弾性係数の設定
諸条件に合わせて断面性能・弾性係数・比重を設定します。
講習会受講者に配布している“接合部検定ツール”のチェックリストから数値をコピーして入力されると簡単です。
設定後、材料・断面性能を下図のように部材に割り振ります。
上弦材は長期・中短期の検定において圧縮力のみ生じるため、小梁による断面欠損は考慮しないとします。
今回は微小な回転剛性を材端部に考慮しているため、全て梁要素でモデル化します。
4.3)部材の接合条件の設定・支持条件の設定
下表のように自由度を設定します。部材の接合条件は、“はり/柱/トラス”、支持条件は“節点”に設定します。
NJ14については、
- 側材の端部接合部に軸剛性を設定します。軸剛性の値は接合部検定ツールのチェックリストより引用します。
- 軸剛性に加えて、解析上不安定とならないように微小な回転剛性を考慮します。
※解析結果においてこの部分に曲げモーメントが生じないことを確認し、固定度を考慮しても問題ないと判断します。(こちらに関しては固定と仮定して計算する方法もあります。考え方は設計者の判断によります。)
その他の部材の接合条件は簡単にピン接合に設定します。(下表”PIN”)
設計者の判断により部材のめり込み剛性や梁端部接合部のせん断・軸ばねは必要に応じて設定してください。
支持条件はピン支持+ローラー支持の他、3次元解析を前提にされているため、トラスに直交する小梁方向に不安定にならないよう(倒れ防止として)、Y方向のみ拘束する条件を設定します。
また、側材は解析モデル内部で下図のように2材に分けて入力することができます。
2材に分けることでMED-3(株式会社 構造システム)とファイルを連動した際にも2材として反映されるため、吹き上げ時の座屈の検定が容易になります。
下記のように、オフセットにて主材105幅と側材38幅の芯々間距離である71.5mmを正負両側に対して作成し、 はり/柱/トラス側材にて同じ節点に側材を2重で入力し、オフセットで定義した名称をそれぞれ入力することで、2材に分けた入力が可能です。
4.4)荷重条件の設定
荷重は上弦材に等分布荷重として作用させます。
解析モデルでは主に全体座標系の負方向に荷重を作用させるため、荷重値(②諸条件の設定)は正負が逆転しますのでご注意ください。今回は全体座標系よりZの負方向に作用させます。
自重は解析モデル内部で自動計算するため、解析>応力解析―計算条件より設定します。
荷重ケースは以下のように設定します。
長期荷重 (TL) = DL+LL
中短期荷重(SL) = DL+LL+SL
短期荷重 (WY) = DL+WY
4.5)解析結果の確認 反力チェック/エラーチェック
検算として、手計算による反力と解析モデルの反力が釣り合うことを確認します。
また、エラー・ワーニングメッセージが表示されている場合にはすべて解消します。
特に部材の接合条件によっては、不安定になってしまうことが多いので注意しましょう。
変形・応力図を確認すると、モデル化のどこに不具合があるか確認しやすいかと思います。
5. おわりに
MPねじ接合システムによるトラスの検討の手順は上記の通りになります。
上記の内容に関して不明点ありましたら、BXカネシンMP課までお問い合わせください。
関連するコラム:case01 MPねじ接合システムによるトラスの構造設計
Keyphrase:#トラス #解析 #FAP-3 #ビス
コラムで使用した製品:MPねじ接合システム
以下、2024年08月30日更新
ご紹介した解析ソフト「FAP-3/MED-3」を取り扱う株式会社構造システム様のホームページでもトラス解析例題をご紹介しています。
初めて使うユーザー向けに分かり易く解説しているので、これから解析にチャレンジしようと思っている方にも参考になると思います。
リンク先の「WEB講座を見る」ボタンでは動画で操作も確認できるのでお勧めです。
【木造トラスの設計実習】(株式会社構造システム様のページ)
https://www.kozo.co.jp/structure/fap/schooltext/truss/index.html
2023年に木構造テラスのスクールにて実習した例題です。
・接合システム:BXカネシン(株)、(株)タツミ
・解析ソフト:FAP-3(Ver.6)、MED-3(Ver.4)、k-DB(Ver.1.0.5.8)