case13 接合部の軸剛性を考慮したモデル化 

金物工法やトラスなどで、接合部の軸方向の変形を考慮したモデルを作成する方法についてご紹介します。

目次
  1. はじめに
  2. 解析
  3. 結果
  4. おわりに

1. はじめに

応力や変形を正確に求めるためには、接合部の変形を考慮する必要があります。
特にトラス梁では、接合部が複数存在し、接合部の変形はたわみ量に大きく影響するので、応力解析などでトラス全体の性能を確認する必要があります。

今では多種多様な構造計算・応力解析ができるソフトがありますが、ソフトによっては接合部の剛性を材端部に直接入力できない場合があるため、接合部の変形を考慮するには一工夫しなくてはなりません。

今回は、柱脚に「高耐力柱脚金物75」を使用した柱が単純に引張られることを想定して、3パターンの方法でモデル化・解析を行ってみます。

2. 解析

解析に用いた諸条件とモデルを示します。

2.1 部材の端部条件として入力する方法

部材のヤング係数は7,000N/mm2、柱脚の剛性は34.2kN/mmを入力します。

入力方法はシンプルですが、圧縮と引張で機構が異なる(今回のように、圧縮:木材の木口面、引張:ドリフトピンの支圧で応力伝達するような)場合は端部剛性の入力には注意が必要です。(今回は、引張だけなので引張専用の剛性のみを入力しています。)

2.2 接合部と部材を一体とみなして、ヤング係数を調整する方法

接合部剛性と部材軸剛性を直列結合した剛性が、入力した要素の軸剛性と等価になるようにヤング係数を算出します。

ヤング係数E(7,000N/mm2)、断面積A(105×105=11,025mm2)、長さL(3,000mm)の部材の軸方向の剛性keは、

  ke = EA / L = 25.7 (kN/mm)

部材と接合部を直列につないだ場合の剛性と等価な剛性をKとすると、

  1 / K =( 1 / ke + 1 / kj )

  K = 14.68 (kN/mm)

よって、モデルに入力するヤング係数E’は

  E’ = KL / A = 3,995 (N/mm2)

ほとんどの解析ソフトで入力できる方法だとは思いますが、曲げも生じる部材の検討では、ヤング係数を調整すると曲げ剛性にも影響するため注意が必要です。
また、2.1のように、圧縮と引張で異なる性能を有する場合は部材に生じる応力を考慮してヤング係数を入力してください。

2.3 端部付近に新たな節点を設け、弾性要素を入力する方法

端部から微小距離を離した位置に新たに節点を作成し、間をスプリング要素でつなぎます。

SNAPではスプリング要素として入力しましたが、接合部の変形が考慮できれば良いので、適切なヤング係数を設定し部材として入力することも可能です。その場合も2.2と同様、圧縮と引張で異なる性能を有する場合は注意が必要です。

また、微小区間分部材が短くなる(節点間隔が近すぎる)とソフトによってはエラーになる場合がありますのでご注意ください。

3. 結果

2で示したモデルについて、解析した結果を示します。

3パターンとも同じ結果になっておりますが、念のため手計算でも確認してみます。

接合部の変形δjと部材の変形δeは、

  δj = T / kj = 0.877 (mm)
  δe = T / ke = 1.167 (mm)

よって、全体の変形δは、

  δ = δj + δe = 2.04 (mm)

解析の結果と同じになっているため、モデルが問題ないことを確認できました。

4. おわりに

ソフトによって入力方法は特徴があります。今回紹介した入力方法以外にも、軸変形用の断面積が調整でき、材軸方向と材軸直交方向の変形を別で考慮できるソフトなどもあります。

いずれしても、詳細な検討や安全な設計のためには、ソフトの仕様やモデル・実情の差異を理解してモデルを作成する必要があります。

トラス架構を構成する接合システムの一つであるMPねじ接合システムでは、使用する際に適切に応力解析を行うことを原則としています。その際、2.2で示した方法のヤング係数を算出するためのツールが、ユーザー専用サイトでダウンロードできますのでご活用ください。

コラムの一覧に戻る