vol.02 金物工法による設計について

vol.02 金物工法による設計について

金物工法の施工上のメリットに関してはBXカネシンのホームページやカタログに明記してありますが、設計上の金物工法のメリットについてはあまり紹介されていません。ここでは、在来工法と比較した金物工法のメリットについて整理してみます。

目次

 1)構造設計上のメリット

 1.1)横架材耐力の向上

 1.2)めり込み耐力の強化

 1.3)品質管理

2)意匠設計上のメリット

 2.1)表しに対応できる

3)構造設計上の注意事項

1)構造設計上のメリット

1.1)横架材接合部耐力の向上 

 大梁などの横架材に小梁が取り付いた場合、仕口やボルトの断面欠損による断面係数Zの低減係数は以下の表のようになっています。在来工法に比較して金物工法だと欠損をかなり小さくできることがわかります(青枠同士の比較)。これにより、梁せい・幅を小さく抑えることが可能になる場合があります。

表 梁の断面係数Zの低減係数

(左;金物工法/右:在来仕口(引用:表2.5.1.8 梁幅105mmのプレカットによる大入れ蟻掛け、及び、短ホゾ差しを設けた場合の断面係数、および全断面に対する低減率)(引用:グレー本※1

金物工法による設計について

 横架材接合部に着目すると、在来工法では断面積Aの低減率が大きくなっています。そのため、梁のせん断耐力を比較すると金物工法の短期基準せん断耐力を比較すると、金物工法のほうが大きな耐力となることが確認できます。

表 梁の断面積Aの低減係数の比較

金物工法による設計について

表2.5.2.2 梁幅105(mm)のプレカット仕口のb’、及び、d’寸法例

より、残存断面率を計算(引用:グレー本※1

残存断面率を計算

 その他のメリットして、①筋かい耐力壁を設けた場合や、②大梁間をつなぐ小梁に耐力壁を設けざるを得ない場合、③跳ねだし梁を小梁で受けて大梁に伝達させる場合等では、梁仕口には逆せん断力が生じます。

 在来仕口では一工夫した納まりとしないと逆せん断力に対応できません。

 一方、金物工法の場合には試験で耐力確認しているため、逆せん断を負担することが可能です。

1.2)めり込み耐力の強化

 在来工法ではホゾ、金物工法ではパイプ穴があるため、それを差し引いた面積に対してめり込み耐力を計算します。柱105角の断面についてめり込み面積を比較すると、金物工法が2割程度大きくなります。実際には、ドリフトピンによってもめり込みに負担していることも考えると実際の余裕度はもう少しあると考えられます。更にめり込み防止金物(土台プレートⅡ)を併用するとより効果的です。

めり込み面積の比較 … A2/A1=10645/8625=1.23

仕口      : A1=105×105-30×80             = 8625

パイプ接合: A2=105×105-3.14×222/4      = 10645

めり込み耐力の強化

引用:プレセッター・プレセッターSUマニュアル補足資料~柱頭柱脚パイプQ&A~2021年度版

PZ-HDP-20+土台プレートⅡの納まり

1.3)品質管理

 在来工法の場合、標準図で仕口形状を明示してもプレカット会社ごとに多少の違いがあるため、設計図書通りの納まりになっているか正確には分かりません。また、施工時の精度によって仕口嵌合に緩い・きついがあり、実質的なせん断性能が落ちる等の影響も考えられます。

 金物工法であれば、プレカット寸法が統一されているため加工精度も管理されています。そのため設計で想定している性能を担保しやすくなると言えます。

2)意匠設計上のメリット

2.1)現しに対応できる

 下図のように納まり上もメリットがあります。下階どちらかが耐力壁でない場合ではホールダウン金物の場合、座金あるいはホールダウン金物が表し部分から見えてしまいます。真壁納まりの場合にはV字金物等が現し面から見えてしまいます。これが金物工法なら、ホールダウン金物はパイプに置き換わり柱の中におさまり、羽子板金物も梁受け金物に置き換わり梁端部に隠れることで意匠的にもスッキリとしたデザインにすることができます。

意匠設計上のメリット
羽子板がないため、燃え代設計でも金物が見えにくい

3)構造設計上の注意事項

 在来工法と異なり金物工法特有の構造設計上の注意事項として、複合応力の検討があります。在来工法では①ホゾ(せん断)とホールダウン金物(引張)で役割分担していたものがパイプ接合(せん断+引張)、②横架材仕口(せん断)と羽子板金物(引張)で役割分担していたものが梁受け金物(せん断+引張)といったように一体となった結果、耐力抵抗要素が分けられないため複合応力の検討を追加で行います。これまで荷重抵抗要素を分けて(役割分担をして)考える構造設計をされていた方には少しなじみにくいかもしれませんので注意が必要です。

 また金物工法の梁受け金物は、梁-梁接合、柱-梁接合で耐力が異なるなど煩雑です。そのため一律安全側の数値を用いるなど、設計者により適切に簡易設計する工夫を加えることで利便性と安全性が向上します。逆せん断・せん断の耐力についても同様のことが言えます。

※1:木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)

タグ:#既製品、#金物工法、#在来工法