vol.04 剛床仮定と水平構面の剛性

vol.04 剛床仮定と水平構面の剛性

MPブレースシートを用いるような比較的高倍率、大きな水平構面を設計する場合、いくつかの留意点があります。

1)剛床と非剛床

水平構面を設計する場合、以下の2パターンがあります。

検討方法1:剛床(水平構面が全く変形しない)と仮定して設計する。
検討方法2:非剛床として、床剛性を考慮して設計する。

木造の許容応力度計算では一般に“検討方法1”を前提条件としており、一貫計算プログラム・許容応力度計算プログラムでも同様の仮定に基づいて計算されています。そのため外力により水平構面に生じる応力が床(屋根)倍率(せん断耐力)以下と確認するのみであり、剛床が成立していることの確認は省略されることが一般的です。

ただし、せん断耐力で水平構面の性能を決めてしまうと、剛床が成立しません。
『木質構造基礎理論(日本建築学会)』“第8章 水平構面の理論”より、剛床仮定が成立していないと水平力が耐力壁に均等に働かず、計算結果と大きく異なる挙動を示す可能性があります。

また剛床仮定が成立しない場合、床剛性も低くなりがちのため、水平力により床の中央部が大きく変形したり、耐力壁の少ない構面に変形が集中して内外装に被害がでる恐れもあります。

床剛性が低い場合
床剛性が低い場合

ちなみに剛床仮定とは別の話ですが、多層階の建物のように、水平構面にもAi分布があります。
水平構面が大きい場合には、その影響によって、想定以上の地震力が生じる場合もあります。

『建築物の構造関係技術基準解説書』より、“比較的大規模な木造建築物における水平構面の安全性確保の考え方“を参照すると、簡易な検討による場合、Co=0.3と1.5倍の応力での水平構面の設計が推奨されています。

設計者によっては、「建物の終局時(大地震時)に対して、水平構面を弾性・許容応力度設計する。」という考えもあります。

このように、水平構面に生じる応力だけではなく、剛性等にも配慮して、ある程度の余力をもって性能を決める必要があります。

2)MPブレースシートではどうしているのか

設計マニュアルに記載の通り、MPブレースシートでは水平構面の面内せん断試験を構面の解析モデルに置き換えて、木造の水平構面試験の評価方法と同様に、4指標より床倍率を評価しています。

 解析モデルは、JISブレースの基準強度で降伏後、弾性剛性の1/1000勾配としています。結果、実験値のせん断耐力と比較して1.5倍程度低めの性能になっています。

(実際には、JISブレースは基準強度で降伏後、弾性剛性の1/100勾配程度で、F値の1.3倍程度まで耐力が上昇し続けます。)

これは、せん断耐力で水平構面の性能を決めてしまっても、ある程度余力が確保できるよう、また、床剛性が低くなりすぎないようにするための配慮です。

構面の増分解析で床倍率設定
構面試験による確認
実験値と解析結果の比較(灰色:実験値 / 赤色:計算値)
実験値と解析結果の比較

また、上記の方法の場合、JISブレースの基準強度により耐力のみで床倍率を設定した場合より、低い性能となります。

逆に言えば、鉄筋ブレースの基準強度により床倍率を決めた場合、床剛性が低く、想定以上に変形する可能性があるため、注意が必要。ということです。

3)まとめ

大規模な木造の床構面にて剛床というのは現実的には難しいため、可能であれば、非剛床にて解析を行って設計することをお勧めします。

また、水平構面のAi分布を考えると、Co=0.2時の部材応力で設計した場合には構面だけではなく、周辺部材・接合部に対してもある程度の配慮が必要になります。