MP接合部標準図に記載している、金物工法を応用した接合部の構造設計上の注意事項を解説します。
既製品を活用して設計することでコストダウンや設計の効率化を図りたい場合に下記を参考のうえ、ご検討ください。
❶平角材(柱・梁)を金物工法で使用
柱のめり込み耐力が不足する等の理由で柱を平角材にする場合があると思います。
正角材ではないので、柱で使われる同一等級材ではなく、梁で一般に使われる対称異等級材の集成材を使うケースがあります。
対称異等級材ではラミナ強度の弱い層にドリフトピンなどをとめ付けることも想定されるため、同一等級材や製材に比べ、母材の基準強度で比較すると性能が落ちると考えられます。
そのため、母材をスギからオウシュウアカマツに変更したり、平角のスギKD材とする等の配慮が必要です。
MP木造建築の場合、耐力壁線間距離が長かったり、床荷重が大きかったりする影響から、プレセッターSUでは梁端部の引張耐力が不足する場合があります。
その場合、PS短ざくを用いて補強する方法がありますが、それでも足りない場合、梁にホールダウン金物を付けることがあります。
後者では、プレセッターSUとの耐力の足し合わせは成立しないため、ホールダウン金物のみで引張力を負担する設計とすることを推奨します。
また、壁仕上げとの干渉にも配慮する必要があるため、その場合には丸鋼ホールダウン1本のみ取り付ける納まりも有効です。
❷外部通路の柱
建物の屋根付き外部通路の柱脚等において、ステンレス装飾柱受を使う場合、風圧による引抜力を後施工アンカーに頼ることになるため、ボックス型柱脚金物やプレセッター柱脚金物(一体型)を採用したいところです。
屋根が掛かるので使用環境Ⅱと考えられますが、庇の出によっては想定より雨がかかることも考えられるので、耐力に余力を見ることを推奨します。
❸庇
外部通路で柱を設けたくない場合等、1.5m程度の庇が必要な場合があります。
見た目に配慮したい場合にはパイプ接合を活用することも考えられます。
その場合、引きボルトラーメンの計算式を参考に設計すれば、既製品を活用可能と考えられます。
❹金物工法の複数使い
柱脚・柱頭金物、梁受け金物を複数個取り付けた場合について、社内試験を行いました。
結果は以下の表の通りです。
(1)柱頭・柱脚金物の試験結果について
スギKD材の試験結果を参照すれば、単純な足し合わせ以上の性能になると判断して設計可能と思われます。
ただ、曲げモーメントの影響もあるため、割裂補強としてボルト締めをしたり、せん断に対しては別途、短ホゾを設けてせん断抵抗させることを推奨します。
(2)梁受け金物の試験結果について
2個並列では3体評価であることもあり、6体評価である1個使いより、ばらつき係数が大きくなる結果ですが、単純な足し合わせが成立すると思われます。
また、MP接合部標準図に試験した仕様の納まり図を追加しました。設計の際にご活用ください。
根拠資料として社内試験結果が必要な場合、構造金物相談所までお問い合わせください。
❺終わりに
今回ご紹介した使い方は参考例であり、試験等で性能確認していない使い方も含んでいます。計画する建物に合わせ適切に判断の上、設計にご活用ください。なお構造金物相談所では接合部のご相談も承っておりますので、お問い合わせください。