vol.14 柱勝ちと梁勝ちの使い分け

架構設計する際に配慮したい接合部の設計に関する内容について整理してみます。

梁勝ちのメリット

柱梁接合部を梁勝ちで設計できると以下のようなメリットがあります。

① 跳ねだし梁を構成できる

② 耐力壁のロッキング変形による柱の浮き上がりを梁で抑えられる

③ 柱をまたいで梁を連続梁とすることで梁成を抑えられる

④ 1方向のみの大スパンであれば、大きなせん断耐力が必要でも特注の梁受け金物がいらない等のメリットがあります。

ただ、接合部としてはめり込み耐力が厳しいので、以下の様な圧縮力を伝達する工夫が必要です。

  • 柱に添え柱をしてめり込み面積を大きくする
  • 平角柱を使う
  • 土台プレートⅡ〈めり込み防止用〉で補強する
  • それでも足りない場合はLSBを介してメタルタッチで応力伝達する

特に梁材端部では中間部よりめり込み耐力が小さくなるため、注意が必要です。

また、3層の建物や出隅柱部などでは、梁のめり込み耐力が厳しくなりやすいので、柱勝ちに変更するなどの箇所に合わせた検討が必要です。

柱勝ちのメリット

柱梁接合部を柱勝ちで設計できると以下のようなメリットがあります。

① 柱の引き抜き力が強い箇所では6m材の通し柱とすれば、柱勝ちの接合部になるため上下階の管柱をつなぐ金物が不要となり、1階柱脚のみ高耐力の金物とすればよくなります。

(例えばMP柱脚システムが必要な設計の場合など特に有効です。)

② 柱の負担する圧縮力が強い場合も同様に柱勝ちにすることで、梁のめり込みに依らず効率よく応力伝達可能になります。

③ 金物工法の場合では、梁の継手として柱勝ちにすることが有ります。また大梁と小梁の梁せいが逆転する場合なども柱勝ちにして収めることもあります。

④ 許容応力度計算する場合、柱が150角以上や平角柱などの大きな断面の場合、柱勝ちとすれば、上下階の壁量のバランス次第で柱により水平力を受けられるため、

    ・設計的に壁量に余裕がなくても余力として荷重負担させられる。

    ・特殊な金物を用いないラーメン構造として大きな開口を設けられる。

ただ、在来仕口では上階梁による柱の断面欠損が大きいため、プレセッターSU等の金物工法にすることが有効です。

最後に

今回は柱梁接合部の納まりとして、梁勝ちと柱勝ちそれぞれの構造的な特徴をご紹介させて頂きました。

構造解析では柱梁接合部の勝ち負けだけで応力分布が変わってきますので、モデル化をする際は接合部の納まりや力の伝達を考慮することが重要となってきます。

接合部の納まり次第で必要な接合部金物も変わってくるので、施工方法もあらかじめイメージしながら梁勝ち・柱勝ちを決定しましょう。

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