vol.15 接合部の低減係数αについて

よくお問い合わせを頂く、接合部の許容耐力を設定する際の低減係数αに関して解説してみます。

はじめに

金物メーカーのカタログに記載の金物のなかには耐力が表記されているものがありますが、短期許容○○耐力ではなく、短期基準引張耐力や短期基準せん断耐力など、短期基準○○耐力といった表記になっているものがあります。

この様な金物を使う際には設計者は低減係数αを設定し基準耐力に乗じて、許容耐力を算出する必要があります。

許容耐力=基準耐力 × α

この接合部の低減係数αについて「1.0」にできる場合の解説が2017年版のグレー本(木造軸組工法住宅の許容応力度設計)に記載があり、その抜粋が以下です。

上記①~③の3つの条件に対して、「BXカネシン製品について、構造用集成材を用いて、使用環境Ⅲで設計している場合」の判断例を紹介します。

条件①の「耐久性」について

BXカネシン製品のついて「接合金物規格Zマーク金物」にある表面処理と同じ又はそれ以上の耐久性を有する確認を行った表面処理を用いているため、条件に適合すると考えられます。

ちなみにZマーク金物に使用される表面処理には、例えば電気亜鉛めっき(JISH8610)や溶融亜鉛めっき鋼板 Z27(JISG3302)などがあります。

条件②「施工精度」について

第三者機関で行う試験では建築現場で一般に使われている工具を用い金物の取り付け施工を行っているため、特別な施工及び精度は必要としないことから条件に適合すると考えられます。

条件③「工学的判断」について

工学的判断それぞれについての判断例です。

「③-1  接合部での脆性的な破壊性状を示したもの」について

試験成績書より基準耐力以後も金物変形、接合具と木材のすべり変位、木材の変形等を伴い最大耐力に達する事から脆性的な破壊をしていないと考えられます。

「③-2 接合部の品質が一定でないもの」について

 BXカネシンでは、ISO9001による製品の品質管理を行っています。

「③-3 施工時の水かかりによる影響があるもの」について

条件①と同様に製品本体及び接合具に防錆処理を施してある為、低減が必要なほど影響しないと考えられます。

「③-4 木材の乾燥収縮による影響によるもの」について

一般に建築現場で使用する木材と同じ品質の木材を試験に使用しているため、低減が必要なほど影響しないと考えられます。

以上の③-1~4は判断の一例ですので、各物件に応じて考慮すべき点があれば適宜低減係数に反映して数値を設定します。

❺最後に

今回は低減係数についての解説や判断例を紹介しました。

使用環境Ⅲの場合について今回は記載しましたが、使用環境によっては別途低減が必要です。ご注意ください。

ここまで低減しない条件を紹介してきましたが、接合部の設計には余力を持たせることが重要です。低減係数を適切に設定し余裕を持たせるか、低減しない場合は接合部の検定比に余裕のある設計をすることが大事です。例えば急な設計変更が必要な時に余力に助けられるケースは意外とあります。

最後に意図的にα=1.0として設計するケースもご紹介します。

耐力壁の柱脚金物にてアンカー降伏させて、接合部を伸ばして設計したいような場合、低減係数をかけてしまうと、アンカー降伏になるかどうかわかりにくくなってしまいます。

そのため、低減しないで、設計応力の割り増しで考える方法もあり得ます。

鉄骨造の設計者としてはこちらのほうがシンプルでなじみやすいと思われます。

確認申請機関からα=1.0とする根拠を求められた場合、上記の判断例をまとめた資料を提供できます。ただ使用状況によっては、α=1.0と判断できないケースもありますのでご了承ください。資料が必要な場合、構造金物相談所までご連絡ください。

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