通常より大きな屋根倍率を確保できるBX高耐力たる木ビスですが、それゆえに注意が必要な点があります。妻面の納まりについて注意点を整理してみます。
❶妻面の小屋組内耐力壁が必要
構造用合板がない時代に制定された木造の仕様規定では、火打ちで水平構面のせん断力を伝達する前提になっています。
そのため、通称グレー本では雲筋交い(振れ止め)を設ける程度の規定となっています。(「2.1.2構法の仕様 (3)水平構面 解説」参照)
現在は屋根構面を構造用合板で固めて火打ちを省略することもあります。ただその場合、屋根構面のせん断力は小屋梁を介して耐力壁線までどのように流れる想定なのでしょうか?
4号建物であれば、壁量に仕上げ3割を見込んで許容応力度計算より壁量が少なく設定されているくらいのざっくり検討なので、妻面の仕上げや雲筋交い、垂木のトラス効果等により何となく応力伝達されている印象です。
ただ、小屋組内耐力壁があると建物外周部ではたる木下に通気層がとれない等の問題があるため、妻面全体に耐力壁がある計画では小屋には同耐力程度の筋交いを採用する等、注意が必要です。
あるいは、石膏ボードの準耐力壁を小屋に設けて、通気層を確保する考え方もありそうです。
小屋組内耐力壁は壁量に含まれないので大臣認定の耐力壁である必要はありません。柔軟に判断頂ければと思います。
❷垂木直下の登り梁か垂木のそぎ継手による引張抵抗
外周部垂木そぎ継手部分の引張力をどのように処理するのか?という問題があります。
基本、外周には小屋組み内耐力壁の配置に合わせて登り梁+羽子板金物があるはずなので問題ないですが、垂木のみの納まりの場合、注意が必要です。
そぎ継手に必要な短期許容引張耐力を試算してみます。
おおよそ最大の8P角で壁線を考えると
スパンL=7.28m、荷重負担幅B=7.28m
屋根の短期許容せん断力相当の等分布荷重wを負担できるとすると
せん断力と短期許容せん断力(=1.96×床倍率α)から Q=wL/2=1.96×α×Bなので
w=2×1.96×1.4(=α)×7.28 (=B) /7.28(=L)=5.49kN/m
簡易に単純梁で考えて曲げモーメントMから外周部の引張耐力Tを計算すると、
M=wL2/8=5.49×7.282/8=36.4kN・m
T=M/B=36.4/7.28= 5.0kN
以上より、そぎ継ぎ手の接合部耐力としては5.0kN必要だということがわかりました。
ただ、高耐力たる木ビスはビス単体ではせん断耐力の評価を受けていません。
そこで対策としては、外周部の垂木を2丁合わせにして側面から一定間隔でビス留めし、そぎ継手位置を千鳥にすることで、側面から打ち付けたビスのせん断により引張力に対して抵抗できます。
❸最後に
今回のように木造の仕様規定にはない項目で、注意が必要な内容もあります。
お困りの際には構造金物相談所までご連絡ください。