前回では、2丁合わせの梁の接合部の注意点についてご紹介しました。今回は短期荷重時に対する検討として、耐力壁を2重配置した場合について、注意点を紹介します。
❶耐力壁2重配置のメリット
耐力壁を2重に配置して設計できると、
- 壁倍率7倍までであればグレー本の範囲、壁倍率5倍までであれば4号建物の範囲で設計が可能となる
- 2重壁とした構面の開口部を大きくできる
- 柱頭柱脚の引抜力が抑えられるため、住宅用の接合金物の範囲で設計できる
等のメリットがあります。
❷水平構面の接合部
柱頭が2階の床にあたる場合、水平構面で負担した水平力を2枚並べた耐力壁それぞれに伝達できるように床合板を釘打ちすることを推奨します。
また、高い床倍率を確保した認定品などの仕様による水平構面は、下図のように梁を並べた状態で釘を打つ想定で認定を取得したわけではないので、仕様から追加で釘を打つ場合は別途計算で安全を確認した方が良いでしょう。 その場合、釘1本あたりのせん断力の足し合わせに低減係数を加味して検討します。
柱頭が屋根の場合、屋根構面と柱頭側の梁では、勾配のある屋根構面からの応力伝達に不安が残るため、上図のように並べて配置した耐力壁上部の梁に剛床を貼るか、MPオールスクリューなどで梁側面から耐力壁一枚分のせん断耐力以上に一体化すること(下図)を推奨します。
❸羽子板ボルトの接合
在来工法の場合、軸組が2重となるため、梁側面から取り付ける羽子板ボルトだけでは長さが足りず納まりません。
梁下あるいは梁上に箱抜きして引きボルトを納める必要があります。
一方、金物工法では、梁勝ちとすることでプレセッターSUを並べることで納めることができます。
ただし、場合によっては2階出隅柱の梁へのめりこみの検討が必要なので、耐力壁それぞれあるいは上階に柱があるほうに関しては、下図のような柱勝ち納まりを推奨します。
❹柱頭柱脚金物の接合部
耐力壁相互が短期荷重時にできるだけ同じ挙動となるように、柱頭柱脚の引張金物は高い方の性能に合わせることが望ましいです。
❺柱脚・基礎の収まり
クリアランスなしで耐力壁を並べる場合、アンカーボルトが現場穴あけとなるので、収まらないことはないですが、フリークランクアンカーボルトとすることを推奨します。
基礎に関しては、ダブル配筋になることから、一般部がシングル配筋となる場合に、主筋の定着の設計に注意が必要です。基礎の交点が特にL型・段差有の場合には要注意です。
❻最後に
耐力壁を2丁合わせした場合の接合部の注意点について紹介しました。
4号建物などで、柱梁をボルトなどで一体化すると同じ通りにあると判断され、5倍壁が2つあるとみなされないこともあります。
確認機関への事前相談が必要です。ご注意ください。