高倍率の耐力壁を採用した場合や、1階柱脚部でコーナー金物を使用した際にはアンカーボルト周りの設計に配慮が必要です。
今回はアンカーボルトと基礎の納まりに関して注意点を紹介します。
❶耐力壁のせん断力を伝えるアンカーボルトは必要に応じてM16サイズを活用
耐力壁が高倍率だと、せん断力を伝達するために必要なアンカーボルトの本数が多くなりがちです。
M12アンカーボルトで設計すると、高耐力柱脚45を用いた場合に土台が切れるため耐力壁間にアンカーボルトが入りきらなかったり、建物全体でアンカーボルト箇所数が多すぎて施工管理の手間も多くなるため、適宜M16アンカーボルトの採用を推奨します。
例えば土台にスギ材を使った場合
壁倍率5倍:せん断力=9.8kN(5.0×1.96kN)
短期許容せん断力J3 M12:8.02kN M16:14.26kN※
よって5倍壁に必要なアンカーボルトは、M12だと2本、M16なら1本
※「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」財)日本住宅・木材技術センター 「2.4.9 土台の~」より
❷アンカーボルトを基礎のどこに置くか
高倍率壁の場合、柱脚の引抜き力も大きくなりがちです。
短期の引張耐力が60kN程度までであれば、シングル配筋で一般的に許容されていることから特段の配慮は不要かと思われます。
ただ、それを超える引抜力の場合、コーン破壊の計算通りの耐力になるよう、基礎を主筋2本以上とあばら筋で囲んだダブル配筋として主筋間にアンカーボルトを埋め込む納まりを推奨します。鉄骨造のアンカーなどと同様の考え方です。
ダブル配筋となる場合、配筋が込み合いがちのため、適切な納まり検討が必要です。
特に柱脚金物を製作金物とし、アンカーボルトが2本以上になる場合等では、必ず基礎込みで施工手順を含めた納まり検討が必要です。
❸アンカーボルトとコーナー金物
コーナー金物を使用した際、土台を介してアンカーボルトに引抜き力が伝達されるため、下記の検討が必要です。
- アンカーボルト座金の土台へのめり込みの検定
- 土台のせん断の検定
- 土台の曲げの検定
土台のせん断・曲げモーメントの検定についてはアンカーボルトの断面欠損を考慮すると厳しいケースがありますので、注意が必要です。
製材の土台では、許容せん断応力度を割り増すという選択肢もあります。詳しくは「木質構造設計規準・同解説」を参照してください。
❹最後に
以上、基礎とアンカーボルト周りの注意点についてご紹介しました。
非住宅でアンカーボルトの性能が高く求められると基礎の検討にも注意が必要です。
最後に、一番大事なことは「アンカーボルトを入れ忘れないこと」です!!!