vol.23 木造ならではの梁継手位置の考え方

木造建築では鉄骨造と違い継手位置を保有耐力接合(母材と同等の断面性能)とすることは簡単にできません。

MP木造建築に限った話ではないですが、在来工法では特に注意が必要な梁の継手位置について、どのような点に配慮する必要があるのか紹介していきます。

耐力壁内には継手を設けない

一般に、耐力壁内に継手を設ける計画は避けるかと思います。ただ、どうしても発生する場合もあるかと思われます。

特に筋交い耐力壁については筋交いの圧縮力により梁に突き上げが生じるため、初期剛性・最大耐力への影響は少ないですが、大変形時に継手が外れる恐れがあるため、注意が必要です。

面材耐力壁の場合、筋交いよりは影響が少ないですが、
例えば下記のような2階耐力壁下の梁に継手を設けると、逆せん断で外れやすくなります。

解析モデルには継手位置まで配慮しないケースもあるかと思います。

また、一貫計算では検定されないケースもあるかと思いますので、別途検討するか避ける等注意が必要です。

面材耐力壁内部に継手があるパターン

継手があっても問題ないケースはありますが、問題があるケースもあるため、
どうしても耐力壁内部に継手が発生する場合、柱勝ちにして金物工法で接合する等、

金物工法を活用したほうが安全に設計できます。

❷耐力壁4P連続配置は納まりを明示

MP木造建築で内部空間を広く計画したい場合、その周囲に耐力壁が多く必要になることがあるかと思います。

横架材は基本的に4m材で計画するため、耐力壁4P連続配置とすると継手が耐力壁内部に発生します。そのため

  • 4P間隔で柱勝ちあるいは通し柱とする
  • 金物工法にする
  • 6m材を使用する(通し柱材を使用)

などの選択肢があります。

上記のように梁の継手(仕口)位置を明らかにすることで
複雑な応力伝達を避けたシンプルな設計とすることができます。

❸その他の構造計画時の注意点

その他、構造計画上の注意点として下記があります。

  • 継手は弱点になるため、フェールセーフとして平面的・立面的にできるだけ千鳥に配置して弱点をずらす。
  • 吹き抜け端部近辺に継手が発生する場合、引張力により外れやすいため十分安全を見て設計する。
  • また階段・吹き抜け横などに耐力壁がある場合で継手もある場合、継手の引張耐力は壁のせん断力程度は負担できるように設計する。
  • 大空間では床倍率が高く、周囲の梁継手の引抜が厳しいケースが多いため、羽子板や短冊金物複数個、金物工法(プレセッターSU等)、適宜ホールダウン金物の検討が必要。

❹最後に

在来工法では横架材継手・仕口廻りの注意事項が多いため、ビギナーの方はまずは金物工法で設計をすると安全に設計できるかと思います。

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