燃えしろ設計をする際には、部材の検討だけでなく接合部についても考慮する必要があります。
今回は、燃えしろ設計の概略と燃えしろ設計時の接合部設計について注意点を紹介します。
❶燃えしろ設計の概略
燃えしろ設計する際に元となる法律は下記の表のとおりです。
柱・はりに関してはどの法律であっても、昭62建告第1902号に従った構造計算を行う必要があり、内容としては「燃えしろを除いた断面の短期許容応力度が長期応力に対して安全であること」とされています。
上記の告示では、「集成材のJAS・LVLのJAS(昭62建告第1898号の第1号・第2号)に適合する部材」と「製材のJAS(昭62建告第1898号の第5号)に適合する部材」のそれぞれに対して、燃えしろとして除く数値が定められているため、基本的にはJAS材を使用する必要があります。
また、接着材を使用している木質材料においては、接着剤の種類によって耐熱性能が異なるため、柱(75分)・はり(75分)、壁・床・屋根の場合は接着剤の種類によって燃えしろの量が規定されています。
75分以外の柱・はりについては、接着剤で燃えしろの時間が変わることはないですが、使用環境AまたはB(火災時でも高度の接着性能が要求される環境)の集成材を使用することを推奨します。
❷接合部についての考え方
接合部を燃えしろ設計する場合、柱・はりの継手又は仕口については昭62建告第1901号に、その他部位については❶の表に示した告示の中に定める基準に従って、「通常の火災時に耐力の低下を有効に防止すること」と定められています。
上記告示について、一般的な柱頭・柱脚、梁の接合金物に関する内容を取り出すと、下記の条件を満たす必要があります。
- 燃えしろを除いた断面で応力伝達ができること
- 金物を木材、その他の材料で防火上有効に被覆すること
燃えしろ設計では防火上有効に被覆されている面は燃えしろを考慮しなくてよいと法律で定められているため、はりの上面が準耐火構造の床である場合は、1の図のように上面を除いた3面から燃えしろを除いて検討を行えば良いです。
また、木材での被覆も有効とされているので、隙間が生じないように接合された合わせ部材(燃えしろより厚い木材で構成されるものに限る)について、木材同士の接触面から燃えしろを除く必要はないと考えられます。
下に合わせ梁の耐火試験を行った後の写真を載せましたのが、隙間から炭化は生じていないことが分かります。
❸梁受け金物を用いた場合の注意点
接合部にプレセッターSUを用いたときに燃えしろ設計をする場合を考えます。
❷の1の条件を満たすためには、燃えしろを除く前後の断面が接合部の適用範囲内にする必要があるのでご注意ください。(プレセッターSUは実験により耐力を確認しているので、燃えしろを除いた断面が適用範囲外となると耐力の説明ができないため)
PSSUを用いて燃えしろ設計する場合に、使用可能な梁断面についてはマニュアルをご参照ください。
❷の2の条件を満たすには、被覆の留め付け方法にも気を付ける必要があります。
❶で説明したように、接着剤の種類によっては火災時に接着性能が失われてしまうため、材の下面の被覆を接着剤で留め付けてしまうと、火災時に被覆が脱落し、準耐火構造として要求される性能を満たせない可能性があります。
そのため、部材下面の被覆はビスなどの火災時にも落ちない留め付け方法とする必要があります。
以上のことを考慮して45分準耐火構造となるように燃えしろ設計をした場合の納まり例を下に示します。
❹最後に
燃えしろ設計というと部材の設計をイメージしがちですが、接合部にも十分気を付けて設計する必要があります。
今回、プレセッターSUを用いた接合部の納まりの一例を示しましたが、より詳しい内容や納まりの例が「プレセッターSUマニュアル補足資料~燃えしろ設計~」に記載されておりますのでご活用ください。
また、❷に記載した方法以外にも実験などで防火上有効な被覆を確認することもできますので、別のコラムでご紹介いたします。
他にも日本集成材工業協同組合のHPには技術資料として、実験により耐火被覆を薄くする手法が示されておりますので詳しく知りたい方はご参照ください。