MPブレースシートを用いて水平構面の構造設計を行う場合、梁-梁接合部小梁側の弱軸応力を考慮した複合応力設計を推奨しています。
横架材に軸力を含む検定を行う場合、計算プログラム内部では、引張のみ負担するブレース置換で水平構面をモデル化して検討しなければ、横架材に生じる軸力が適切に考慮されません。
MPブレースシートマニュアルの設計例では軸力を含む部材の複合応力検定は行っていませんでしたが、ここではMPブレースシートが取り付く小梁について軸力を含む複合応力に対して手計算にて断面算定を行います。
参考資料:
- MPブレースシートマニュアル Vol.1 2021.11
- 木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)(公財 日本住宅・木材技術センター)
- 木質構造設計規準同解説(日本建築学会)
目次
- 小梁の検討部位
- 断面算定方法
- 断面算定結果
- まとめ
1)小梁の検討部位
2)断面算定方法
- 小梁の軸力と曲げモーメント(強軸・弱軸)の複合応力検定、及び、横架材接合部のせん断(強軸・弱軸)の検定を行います。
- MPブレースシート1段使いと2段使いの場合について検定します。
鉄筋ブレースにより小梁に生じる圧縮力は、手計算で簡易に検討するため、鉄筋ブレースの降伏時の軸力とし、形状比は1.0:1.2として計算します。
計算式は下記とします。
ブレース引張軸力により小梁に生じる圧縮力 = 47.6(ブレース降伏時軸力)×1.2/√(1.22+12)
許容圧縮応力度は『木質構造設計規準同解説』3)をもとに計算します。座屈長さは方杖と大梁幅を差しひいて計算しました。
- 区画構面サイズ1辺4mの場合、一般流通材の梁を継手なしでかけるのみのため、自重のみが生じる(小屋束を大梁に立てる場合)として小梁の強軸曲げ・せん断応力を計算します。
小梁の断面欠損はないため、考慮しません。 - せん断の検定において、横架材の断面残存率は『木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)』2)を参考に0.4とします。
- その他の各種数値に関してはマニュアル1)より引用します。
3)断面算定結果
以下に検定結果を示します。
検定結果より、105mm幅の小梁を除いて1辺4m以下の区画構面サイズでは、
横架材の曲げ+圧縮応力 の検定で部材断面が決定されていないため、横架材接合部のせん断の検定のみを行えばよいことがわかります。
4)まとめ
MPブレースシートが取り付く小梁の断面算定を行いました。
ブレースの軸力を降伏時に設定すれば、検定が簡易になることが確認できるかと思います。
一点補足です。
大梁断面が大きい場合、大梁が多くの弱軸応力を負担するため、小梁にはほとんど弱軸応力が入りません。
設計マニュアルでも弱軸の検討は評価外であり、絶対的に必要だと明記しているわけではありませんので、小梁には弱軸応力が生じないとして、検討を省略すると判断する設計者判断もあり得ます。
こちらの判断のほうが、小梁の部材断面も抑えられて、経済的です。