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case01 MPねじ接合システムによるトラスの構造設計 - 構造金物相談所

この記事ではMPねじ接合システムを用いてトラスの構造解析を行う流れを解説します。

倉庫のような平屋に屋根架構をかけた場合について検討します。

流れは下記参考資料に基づいて行います。計算プログラムは汎用解析プログラムであるmidas i Genにて検討します。

参考資料:

  • 木造軸組工法 中大規模木造建築物の構造設計の手引き(許容応力度設計編) 公益財団法人 日本住宅・木材技術センターp313 山形トラスの設計例
  • MPねじ接合システムマニュアル

目次

1)講習会の受講

2)諸条件の整理

3)構造計画の確認

4)解析モデルの作成

5)断面検定

6)構造図の作図

7)チェックリストによる設計確認

8)最後に

1)講習会の受講

設計マニュアルの適用範囲に記載のある通り、BXカネシンが認めた設計者のみ使用できます。講習会の受講に関してはBXカネシンMP課までご相談ください。ご要望に応じて個別に講習を行うことも可能です。講習会では設計ツールとして接合部設計ツール・設計チェックリストを配布しております(他、ユーザーサイトにはMPねじ接合システムマニュアル、架構詳細図例、構造標準図)。下記の検討にお使い頂けます。

2)諸条件の整理

キングポストトラスを例に検討します。検討条件は下記とします。

  1. 屋根勾配及びスパン:4寸勾配、スパン10m
  2. 屋根トラスの配置間隔:3.0P(2.73m)
  3. 部材断面寸法及び使用材料、基準弾性係数 
    • 主材及び登梁     :105×240(E=9500N/m㎡、G=750 N/m㎡)
    • 側材                      :2-38×235(E=9600N/m㎡、G=640N/m㎡)
  4. 設計用荷重の設定
    • 部材重量は一律比重を5.0kN/㎥とし、解析モデル内で自動計算します。
    • 積雪荷重の特定緩勾配による割増には当てはまらないため考慮しないとします。
    • 固定荷重は折板屋根相当と仮定しました。
    • 垂直積雪量は50cmと想定しました。
    • 積載荷重は鉄骨体育館屋根の積載荷重を採用しました。
    • 風荷重は安全側にシャッター全開と仮定し、風上開放型で計算しました。
    • 安全側の配慮として、短期の風荷重時の検定においては積載荷重と予備荷重を除きました。
    • 簡単に、振れ止めや12mごとの石膏ボードによる荷重は無視したため、固定荷重には予備荷重として0.1kN/㎡を加えました。
  • 固定荷重(DL)                  :               0.2(+0.1)(kN/㎡) 
  • 積雪荷重(SL)                    :               1.0             (kN/㎡)
  • 積載荷重(LL)                    :               0.3             (kN/㎡)
  • 風荷重 (WY)                 :               1.0、-0.5  (kN/㎡)

3)構造計画の確認

スパン表を参考に今回の計画が妥当であるかの確認を行います。スパン表は参考文献2)をご確認ください。解析プログラムにて材端部条件をピンとして簡易に応力チェックを行う方法でも構いません。今回はスパン表を参考にMPねじ接合システムのNJ-14を用いることとします。

4)解析モデルの作成

4.0)解析モデル図の作図

ある程度納まりを想定して解析モデル図を作図します。MPねじ接合システムの架構詳細図例が参考になります。想定する解析モデルが不安定になっていないかを確認する意味でも必要な作業です。住宅のプレカットラインで加工可能なよう、また経済設計に配慮して一般流通材(集成材であれば120x450x6m)以下の断面・長さの部材を用いるように計画します。

4.1)CADによる解析モデルの作図とDXF変換

CADでモデル図を作成し、DXF変換することで解析プログラムに読み込みます。

JWWCADによる作図>DXF変換>ファイル>外部ファイルを読み込み>AutoCADDXFファイル>DXFファイルの読み込み(画面右下の単位系をmmに設定)

ここで線分は解析モデルで作成する節点ごとに配置します。また、解析プログラム内部で梁端部の接合条件を設定しやすいよう、全体座標系に合わせて左から右、かつ、下から上に作図する等、一定のルールをもって作成して下さい。また、変換の際には単位系にご注意ください。

4.2)部材断面・弾性係数の設定

諸条件に合わせて断面性能・弾性係数を設定します。講習会受講者に配布している“接合部検定ツール”のチェックリストより数値をコピーして入力されると簡単です。設定後、性能を要素に割り振ります(モデル>要素>属性変更)。

上弦材は変形の検定をする長期・中短期の検定において、圧縮力のみ生じるため、小梁により断面欠損は考慮しないとします。

4.3)要素の種類の設定

今回は応力図がまとめて確認できるよう、また、トラス要素だと不安定になる箇所があるため、全て梁要素でモデル化します。

モデル>要素>属性変更、あるいは、

ツリ―メニュー>要素を右クリック>テーブル>要素詳細テーブル

4.4)梁端部結合条件を設定・支持条件の設定

梁端部の結合条件より、MPねじ接合システムの端部接合部に軸剛性を設定します。回転に対してはフリーであるピン接合となるようにMy,Mz,Mzは固定度を有さない設定とします。軸剛性の値は接合部検定ツールのチェックリストより引用します。

真束とかい木の接合部、飼い木とツーバイ材の接合部は軸剛性に加えて、解析上不安定とならないように微小な回転剛性を考慮します。解析結果においてこの部分に曲げモーメントが生じないことを確認し、問題ないと判断します。

その他の材端部条件については簡単にピン接合に設定します。設計者の判断により部材のめり込み剛性や梁端部接合部のせん断・軸ばねを設定してください。尚、要素の連結順序を忘れた場合、CTRL+E>要素>要素内節点の連結順序より連結順序が表示できるため、確認しながら梁端部結合条件を設定できます。

支持条件はピン支持+ローラー支持とします。またこの汎用解析プログラムは3次元解析を前提にされているため、モデル>基本設定>解析モデルの基本設定>X-Y平面より、2次元解析の設定になるように変更します。これにより余計な支持条件の設定が不要になります。

4.5)荷重条件の設定

荷重は簡易に上弦材に等分布荷重として作用させます。解析モデルでは主に全体座標系の負方向に荷重を作用させるため、荷重値(②諸条件の設定)は正負が逆転しますのでご注意ください。今回は全体座標系よりYの負方向に作用させます。(荷重>静的荷重>梁要素荷重>梁要素荷重<要素>)

自重は解析モデル内部で自動計算するため、荷重>静的荷重>自重より負方向に1.0として設定します。

荷重ケースに応じて荷重を設定し、荷重組み合わせ条件(結果>荷重組み合わせ)を設定します。荷重組み合わせは以下に設定します。

  • 長期荷重(TL)        =                DL+LL
  • 中短期荷重(sSL)   =                DL+LL+SL
  • 短期荷重(sWY)     =               0.66 DL+WY(※予備荷重を除くため0.66を乗じています)

4.6)解析結果の確認 反力チェック/エラーチェック

概略で手計算による反力と解析モデル内部の反力が釣り合うことを確認します。

また、エラー・ワーニングメッセージが表示されている場合にはすべて解消します。

特に梁端部の結合条件の設定によって不安定になってしまうことが多いので注意しましょう。変形図を確認すると、どこのモデル化に不具合があるか確認しやすいかと思います。

5)断面検定

5.1)接合部の断面算定

MPねじ接合システムの接合部の検定は、講習会修了者への配布資料およびMPねじ接合システムマニュアルを基に計算します。

 検討方法はマニュアル記載の内容の通りですので、ここでは省略します。

5.2)部材の検定

木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)を参考に部材の検定を行います。ここでは検討を省略します。

補足として、風荷重時に2丁合わせのツーバイ材に圧縮力が生じる場合があります。座屈耐力が不足する際には、105×105角材を挟み込んでボルト締めして複合圧縮材にする等、座屈耐力を上げる必要があります。

計算による場合は『建築学の基礎 木質構造 第4版』の”4.4 複合圧縮材→4.4.1 断面計算”を参考に手計算にて簡易に検討を行うことをお勧め致します。

解析による場合には『木質構造設計基準・同解説』を参考に検討してください。社内試験にてボルト締めをして圧縮試験していますので、確認用としてご提供することも可能です。詳しくはBXカネシンMP課までお問い合わせください。

5.3)鉛直変位の検定

木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)を参考に変位の検定を行います。ここでは検討を省略します。

経年による屋根のたわみの増加により雨漏りが発生する可能性があるため、接合部の剛性を考慮したモデルについて、長期荷重に対しては弾性変形にクリープ変形による増大係数を乗じた変形角が1/200rad以下、積雪荷重時には弾性変形に対して変形角が1/150rad以下に設計することを推奨します。

6)構造図の作図

解析結果をもとに架構詳細図を作図します。前述のようにBXカネシンのユーザーサイトでは架構詳細図を公開しているため作図にご利用ください。納まり作図時の注意事項などを明記していますので、設計の参考にして頂ければと思います。

また下図のように建て方に配慮して、ボルトによる地組後に確認する全体の寸法を明記しておくことをお勧めします。これはボルトのクリアランスによる多少のずれが累積されるためです。

また、構造標準図もご準備がありますので、現場への指示や架構詳細図作図用にご利用ください。

7)チェックリストによる設計確認

講習会配布のチェックリストにより適用範囲を満たしているかの確認を行います。

8)最後に

MPねじ接合システムによるトラスの検討の手順は上記の通りになります。

上記の内容に関して不明点ありましたら、BXカネシンMP課までお問い合わせください。