case05 MPシアプレートを用いた鉄筋ブレース接合部の設計例

MPねじ接合システムではカバーしきれない様な『多雪地域の約12mスパン越え』を想定した、平行弦トラスの鉄筋ブレース接合部(中短期軸力150kN以上)の設計をしてみます。

目次
  1. 設計方針
  2. 検討結果
  3. 最後に

今回想定する平行弦トラスの鉄筋ブレース接合部は、通常のボルト接合では本数が多くなり、『ブレース羽子板に干渉したり、耐力低減が大きかったり、木材に対してバランスよく配置できなかったり』するため、ボルト本数を減らしプレートサイズを小さく出来る、MPシアプレートを用いて設計します。

接合部は以下のような納まりを想定します。

今回のコラムではトラスフレームの解析や検討は省略し、ブレース軸力150kNに耐えうる接合部について検討してみます。

納まり図と簡易短手断面図

❶設計方針

設計方針は以下の通りです。

  • MPシアプレート102(図中:MPSP102)を1箇所の表裏で8個配置する。配置間隔は本例題では中央にM20ボルトがあるため、縁・端距離に応じてMPシアプレートを中心に楕円を描き、それに干渉しない位置とする。(木質構造設計基準同解説p.391を参照)
  • JISブレース 2-M24(短期許容軸力:86.8×2=173.6kN)、MPシアプレートを取り付ける梁はLVL(65V-55H)とする。
  • 接合部の直上に束があるため、束の圧縮軸力によりMPシアプレートによる木材の割裂・せん断は拘束されているため、検定不要と判断します。
  • MPシアプレートの初期滑りに配慮して、M20中ボルトにてMPシアプレートを仮締め後、JISブレースターンバックルを締め付け、最後にM20ボルトを40N・mのトルクで締め付ける施工手順とします。
  • JISブレース端部のボルト接合部は摩擦接合ではないので、支圧接合と考えます。
  • JISブレース端部のボルトは最低でも強度区分8.8が必要なため、施工時の誤りに配慮して、MPシアプレートを止めつけるM20中ボルトも共通の強度区分とします。(強度区分10.9の場合、メッキ処理によっては水素脆性の恐れがあるため、強度区分8.8とします。)

❷検討結果

BXカネシン提供のMPシアプレート設計ツールを活用し検討した結果は以下の通りです。

(設計ツールはホームページからダウンロードできます。)

尚、MPシアプレートの複数個配置の耐力は(材中間部のせん断なので、単体の要素試験結果より大きな耐力値となると想定されますが)実験的に確認していないため、適切に余力を確保してください。

❸最後に

MPシアプレートは鉄筋ブレースの材端部の接合にも適しているため、水平構面や耐力壁等でもご活用ください。

ただし、鉄筋ブレースを耐力壁として使う場合には、鋼材のばらつき等も考慮して必ず鋼材降伏となるように設計するといった配慮が必要です。

できれば終局状態を試験確認することが望ましいですが、難しい場合は、MPブレースシートの活用を推奨いたします。