case12 金物工法を活用した梁組の設計その2 

金物工法を使用して梁せいを抑えて設計する例を紹介します。

目次
  1. はじめに
  2. 梁組の検討
  3. 最後に

❶設計条件

以下のような1階に柱を立てられない部分の梁-梁接合について、断面欠損の視点から在来工法と金物工法の比較をしてみます。

想定建物断面

梁の断面係数の低減率は以下になります。

金物工法の場合、このサイトの「木造設計資料集>接合部リスト>金物工法低減係数一覧」より参照し、実務的に簡易に設計するため「ロールパイプ10などのパイプ有では0.7、パイプなしでは0.85」とします。

在来仕口の断面欠損は、グレー本※に参考として明示されている「片側蟻仕口であれば-0.25、短ホゾであれば-0.15」の簡易な欠損率を参照し0.35とします。

梁の断面積の低減率は金物工法では試験結果より1.0に近いため多少安全をみて0.85、在来工法では簡易に最小値の0.45とします。

別途、パイプ欠損なしの断面係数の低減率を計算しています。

これは、パイプ接合部分は長期の曲げモーメントの圧縮側にあり、木の繊維方向のヤング係数より十分高いことから、欠損がないと見なしうるためです。

断面係数の低減率は設計者の裁量で決められることが多いため、適宜判断可能かと思われます。

大梁のボルト欠損も同様に考えられそうですが、大梁せいによっては長期荷重時の曲げモーメントの引張側にボルト欠損がかかる場合を想定して、ここではボルト欠損は考慮します。

荷重条件は、長期荷重のみ生じる場合を考えて、
床は、「固定荷重900N/㎡+積載荷重(事務所)1800N/㎡≦2700N/㎡」、
丘立ち柱は、外壁750N/㎡は高さ3m、屋根800N/㎡、梁の荷重負担幅は2Pとして、
「(3m×750N/㎡+800 N/㎡×2階スパン4P/2×0.91m)×2P×0.91m≦10kN程度」
として単純梁の等分布荷重により長期の梁の曲げモーメントの検討をします。
たわみの検討は省略します。

❷検討結果

梁材は赤松E105-F300相当として、必要な梁せいを計算すると以下になります。

このように、在来工法から金物工法に変更、また断面欠損の読み方を工夫することで、梁せいを抑えられ、一般流通材で設計できるケースがありますので、適宜金物工法をご活用ください。

最後に

今回は短期の検定をしていませんが、2階外壁ラインに耐力壁がある場合、梁せいを上げないと耐力壁が効きにくくなるため、それにより梁せいが変わる可能性があります。

また、短期荷重時の耐力壁脚部の引張力の影響が大きい場合、パイプ欠損部分が曲げモーメント作用時に引張側になり、別途配慮が必要な場合があります。

致し方なく耐力壁が入る場合でも、長期の自重でキャンセルできるくらいの耐力壁配置で計画したいところです。

なお今回検討したケースと同様に、跳ね出し梁の支持部も断面欠損の影響を受けやすい箇所ですので、ご注意ください。

※「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」2017年版 財)日本住宅・木材技術センター

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