構造設計コラムvol.21 では、耐力壁の2重配置をする際の注意点をご紹介しました。今回は、実際に耐力壁の2重配置を採用した場合の設計の流れを紹介します。
目次
- はじめに
- 設計方針と計算結果
- 検討例
- おわりに
1. はじめに
耐力壁の2重配置に関して、実際の建物を想定して検討してみます。
下図のような大きな開口がある場合を想定して検討します。
2. 設計方針
- 1、2階ともに耐力壁を2重配置とした場合を検討します。
- 耐力壁は納まりに配慮してH30告示の真壁耐力壁3.3倍を両面張りした壁倍率6.6倍の2重配置として、壁倍率6.6倍以上の応力伝達ができることを確認します。
- 2丁合わせ梁相互の応力伝達に関して、
2階床レベルについては、床合板による釘接合で検討します。
2階床の釘打ちは詳細計算によりCN75@75で床倍率9倍程度のため、
同じ釘本数で6.6倍壁の応力が伝達できるかの確認をします。 - 軒桁レベルについては、梁側面からのビス打ちにより検討します。
- ビスのせん断耐力はMPオールスクリューの側面からの垂直打ちとします。
3. 検討例
2階床レベルについて、以下に釘の検討例を示します。釘耐力表の引用が容易ですが、ここではEYT式に基づいて検討します。
計算によるため詳細計算で用いる釘の実験値より1.5倍程度耐力が下がっています。
ただ、実際にはせん断のみではなく、曲げ応力の影響もあるため、計算上の耐力での設計を推奨します。
軒レベルについて、以下にビス打ちの検討例を示します。
「MPオールスクリューマニュアル(2024年1月版)」の「Ⅱ-1-4.構造性能値」より、
集成材-集成材(150mm厚)接合の短期許容せん断耐力2.3kNを引用します。
評価外の判断ですが、ここではCLT床(90mm厚)-集成材接合の短期許容せん断耐力が3.7kNであり、ビスの曲げ区間が短くなる分には十分安全側と判断しています。
計算の結果、
ここではMPAS-180@300の上下千鳥(1列で@150に同じ)配置でラミナ強度が高い箇所に接合します。 梁側面中心に@150で配置するかどうかに関しては判断が分かれるところかと思われます。
4. おわりに
今回のように真壁耐力壁で2重配置の場合、床の釘打ちで設計すると、施工時に検査し忘れる恐れがあります。どちらもビス打ちが施工管理上は望ましいかもしれません。
また、逆に釘打ちだけだったとしても、適切に施工されるよう詳細図や伏図への明記を推奨します。
Keyphrase:#2重壁 #合わせ部材 #大開口
コラムで使用した製品:MPオールスクリュー