case17 プレセッターSUを使った燃えしろ設計 


接合部の燃えしろ設計では構造設計コラムVol.24で紹介した告示に基づく仕様(以下、通常仕様)以外にも、実験に基づいた仕様(以下、実験仕様)で設計することもできます。今回は通常仕様と実験仕様について、断面や見た目などの比較を行います。

目次
  1. はじめに
  2. 検討条件
  3. 検討結果
  4. 見え方について
  5. おわりに

1. はじめに

建築基準法では、耐火構造や準耐火構造の主要構造部についての性能が規定されていますが、小ばりは主要構造物に含まれていないため、厳密には小ばりに防火上の性能は不要となります。

とはいえ、床や屋根については主要構造部と定められており、耐火性能や準耐火性能が規定されているので、床や屋根を支える小ばりについては一定の時間、破壊しないようにする必要があります。
そのため、床や屋根で小ばりをあらわしで用いる場合は「はり」ではなく、「床」や「屋根」に求められる時間分の燃えしろを確保する必要があります。

今回は、小ばりにプレセッターSUを用いて燃えしろ設計をする場合に、通常仕様と実験仕様のそれぞれについて断面検討を行います。

2. 検討条件

プレセッターSU補足資料~燃えしろ設計~に記載の実験仕様(120幅2丁・150幅)と通常仕様の3パターン(床は2パターン)検討します。
検討条件は以下の通りです。

  • 負担面積:床(45分)は、5P(4.55m)@0.91mと6P(5.46m)@1.82m
         屋根(30分)は、5P(4.55m)@0.91mと6P(5.46m)@2.73m
  • 樹種:オウシュウアカマツE105-F300
  • 燃えしろ面の数:3面
  • 検討項目:部材の曲げ(長期・短期(火災時))、たわみ、接合部の耐力、プレセッターSUの適用範囲
  • クライテリア:検定比0.85以下、たわみ制限(常時) 床:1/300以下、屋根:1/200以下
  • 積載荷重(用途):床-事務所、屋根-非歩行屋根
  • 固定荷重:下表を想定

3. 検討結果

検討結果を以下に示します。

意匠性(あらわしで用いる場合)や施工性にも影響するため、部材費用のみで判断することはできませんが、床の場合は120幅2丁合わせ仕様の方が特注断面の木材を使わなくてよいためコストメリットがありそうです。
一方、屋根の場合は、材料単価にもよりますが、150幅や180幅の方が安いか同等くらいになりそうです。

4. 見え方について

3仕様ともドリフトピンについては木栓で被覆するため、見た目は変わりません(木栓の長さは実験仕様の方が短いです)が、金物下端については、3種類それぞれで異なり、通常仕様<実験仕様(120幅2丁)<実験仕様(150幅)の順で自由度が高いです。
いずれの仕様も木栓の代替としてスリットの下端に当て木をすることもできます。

被覆寸法(左:木栓、右:当て木)

通常仕様の場合は、木栓の形状が複雑なので、当て木とした方が楽に被覆ができます。
当て木とする場合は、最低限の寸法さえ守れば良いため、三角形とした方が見た目は良いかもしれません。

それぞれの見た目のイメージを下に示します。(左:通常仕様(当て木)、中:実験仕様(120幅2丁)、右:実験仕様(150幅))

5. おわりに

今回はプレセッターSUを使用した場合の燃えしろ設計について検討しましたが、実験では鋼板1枚を梁に挿入して温度を計測するなど、
特注金物に対して利用できるデータも測定しておりますので、接合部の燃えしろ設計でお困りの際はご気軽にご相談ください。

Keyphrase:#燃えしろ設計 #梁受金物
コラムで使用した製品:プレセッターSU梁受金物

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