工法や部材を問わず使えるボルト接合は、計算で耐力も算出しやすいため、設計の際に採用されることは多いと思います。
今回は、設計する際に知っておいたほうが良いボルトの情報についてお伝えします。
❶ボルト接合の使用例
ボルト接合は汎用性の高い接合具としてよく知られているかと思われます。以下のようなおさまりが考えられます。
特に、引きボルトとウッドタッチのみで済ませられれば、ビス接合と同様に製作金物による接合部に比べて、プレカットとの調整手間が少なくできるため、まずはドリフトピン接合での設計の前にボルト接合での検討をおすすめします。
❷六角ボルトと中ボルト
六角ボルトが建築分野以外では主流です。構造設計では中ボルトを使いがちですが、六角ボルトの方が多少なりともコストを抑えられます。
その際、中ボルトの場合、呼び径=軸径になりますが、
六角ボルトの場合、呼び径をワンサイズ小さくした程度の軸径になります。
慣れないうちは「呼び径=軸径」と思いがちのため、注意が必要です。
また、計算時には切削ねじであれば、ねじ部の谷の断面で計算する必要がありますので、鉄骨造の中ボルトでの設計の考え方(鋼構造接合部設計指針などを参照)を参考に適切に設計してください。
❸高強度の強度区分ボルトを適宜活用
Zマーク金物等、強度区分4.6の住宅用六角ボルトで設計できれば、コストメリットがありますが、耐力的に厳しい場合があります。 その場合、強度区分8.8、10.9などの高強度ボルトの検討を推奨します。 コストメリットの他、軸径を抑えられるため、木材の断面欠損を最小限におさえられます。 ただし、以下について検討が必要です。
1)伸び能力
2)使用材料
3)設計耐力
4)メッキ処理
1)伸び能力
強度区分によるボルトの場合、ボルトの伸び能力に対して不安が残ります。
鉄骨造の設計に慣れた方であれば、SNR490Bを転造ねじ加工したボルト(ABR490に同じ)を使いがちですが、ボルトの伸び能力に期待しなければ、必ずしもSNRである必要はありません。
2)使用材料
鉄骨造の使用材料規定に合わせるのであれば、使用できる強度区分は6.8までです。
ただ、構造耐力上主要な部分に接合部は含まれないため、必ずしも準拠する必要はありません。
同様の理由からMPホールダウン108でも強度区分8.8のボルトを使用しています。
ちなみに、強度区分4.8、6.8は一般的に流通性が少なめです。(6.8は住宅のホールダウン金物での利用が多いですが、一度に大量生産するが故に流通性を補えています。)
3)設計耐力
下表のように、JISにもボルト強度は規定されているため、確認機関との協議は必要ですが、設計で使用するだけの根拠はあります。下表の水色部が基準強度にあたります。
※下降伏応力が求められない場合、0.2%耐力による。
4)メッキ処理
高強度ボルト、特に強度区分10.9の場合はメッキ処理を行わず、生地やサビ止め塗装で使うことが一般的に多いです。特に長期で荷重を負担する箇所で使用する場合はご注意ください。理由が気になる方は「遅れ破壊」で検索してみてください。
❹最後に
高強度ボルトのご利用に関するお問い合わせやお見積りは構造金物相談所までご相談ください。